花のあと-映画-

hidesun(英寸)

2011年06月12日 21:21


藤沢周平の同名短編小説を、『青い鳥』の中西健二監督が映画化。江戸時代の東北を舞台に、ひそかに思いを寄せていた武士が自害したことを知り、その原因となった相手に敵討ちを果たそうとする女性の姿を描く。


女でありながら男顔負けの剣術の腕を持つ以登(北川景子)は、一度だけ竹刀を交えた江口孫四郎(宮尾俊太郎)に一瞬にして恋心を抱く

江戸時代。東北の小さな藩、海坂。満開の桜の下、以登(北川景子)は一人の若い武士、江口孫四郎(宮尾俊太郎)と出逢う。その男は下級の身分であったが、藩随一の剣士だった。自らも男に劣らぬ剣を遣う以登は数日後、父・寺井甚左衛門(國村隼)の許しを得て、ただ一度だけ孫四郎と竹刀を交える。激しく竹刀を打ち合いながら、以登の胸を焦がしていたものは、生まれて初めて感じる熱い恋心であった。だが、それは決してかなうことのない恋。以登には家の定めた片桐才助(甲本雅裕)という風采の上がらぬ許婚がいたのだ。意に沿わぬ人と結ばれゆく自分の運命に抗うことなく、以登は静かに孫四郎への想いを断ち切り、江戸に留学している才助の帰りを待ち続けるのだった。数ヵ月後。海坂に冷たく白い雪が降り始めた頃。以登の元に、孫四郎が自ら命を絶ったとの報が舞い込んでくる。藩の重鎮である一人の男から謀られた孫四郎が、窮地に陥った末のことであった。そのあまりにも卑劣な行為に、以登は剣を手に取る。それは、孫四郎との思い出のため、そして人として守るべき「義」を貫くためであった。激闘の末、以登はその想いを果たし終える。以登のやるせなさ、切なさを温かく見守り、最後にそっと手を差しのべたのは、江戸から帰ってきた才助だった。


孫四郎と出逢ってからちょうど一年後。海坂にめぐり来た春の陽射しの中、以登は再び満開の桜の下を歩いていた。風に散る花びらとともに、以登にとっての「花の季節」が確実に過ぎ去ろうとしていた。これまでにない穏やかな微笑みを浮かべながら、桜の道を行く以登の目には新たな人生が既に映っている。以登の数歩先には、のんびりと歩く才助の姿があった。

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